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「諦めたくなんか、ないさ」
そうだ、僕にはまだきっと、未練があるのだ。
この腐りきった、どうしようもないくらいに膿んだ灰色の世界に、まだ心残りがあるのだ。
だったら、どうする?
僕はどうしたら、いい?
「探しに行こうよ」
君は事も無げに言った。
僕はハッとして、ようやく前を向く。
「探しに行こうよ、何処にでも、幾らでも。あなたの諦めたくない理由を」
「そんなことしたって、無駄さ」
「どうして?」
「無駄だからだよ」
「そんなの、わからないでしょ?」
「僕にはわかる。人生なんて碌なもんじゃないんだ、そんな都合良く、見つかるはずがない」
「じゃあ、私が勝手に探す。だって、きっとそれは――――」
――――あなたにとって、かけがえのないものだろうから。
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