霧。

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その言葉を合図に、 ゆっくりと電車は動き出す。 錆びた表面も、レールの有無も関係なく。 纏う全てのマイナス要素を、まるで意にも介さないかのように、車体が大きく深呼吸をした。 胎動する。 躍動する。 鳴動する。 あやふやな色彩の中を、 流れる、流れる。 景色が、流れる。 僕はそんな中、ただ呆けて、座っているばかりだ。 ただただ。 虚ろのまま。 電車は空へと、駆け上がる。
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