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「生きてはいません。ゆっくり死んでいるんです」
ほんの少しだけ微睡んで、何度か船を漕いで、意識がようやくはっきりし始めた時、僕の正面には人形が座っていた。
手足はガラクタのような寄せ集めで、けれど、身を包むのは汚れ一つ無い背広。
本来頭が載っているはずの場所には、代わりと言わんばかりに大きな電球が嵌め込まれていた。
そんな奇妙な出で立ちだったので、僕は迷わず聞いた。
「貴方はどうして生きているのか」と。
そして、人形はそう答えた。
声帯も肺も舌もないその声は、まるで壊れかけのラジオのようにノイズまみれだった。
人形は続ける。
「これは何も、私がこんな有り様だから言っているのではありませんよ。形あるものは皆そうなのです」
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