霞。

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「そうかもしれません。しかし、今こうして私は確固たる自我と意識を持った上で貴方と会話しています。だから私はこの命に誓って、作られた物であるとは考えたくない」 「滑稽ですね」 「いいんです。そのくらいが丁度」 彼の頭の中のフィラメントに、熱が込められていく。 徐々に赤く、電気の熱さを、感じさせる。 「でも、不思議だと思いませんか」 「何がですか」 「人は産み落とされたその瞬間に黄泉への第一歩目を踏み出すのです。しかし、どうして母親は殺人罪に問われないのでしょうか」 「殺したのではなく、産んだからでしょう」 「でも、そもそも生まれなければ死ぬことはないんです。産むことで、死の鎖を我が子に巻き付けているんですよ」
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