霞。

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僕のその一言に反応するように、ポッと、電球が大きく明滅した。 それは憤りによるものだったのかもしれない。少なくとも僕には、それ以外の理由が見つからなかった。 「………そうでしょうね。自分の言いたいことだけ言うと、こうなってしまうのかもしれません」 人形は項垂れる。輝きを失った鈍色の体。それでもなお、電球は光り続ける。 「でも、悔しいじゃないですか。こんな風に、息も出来ないまま、涙も流せないまま、全身が錆びていくなんて、あんまりじゃないですか。せめて、こんな風に生んでしまった誰かが罰されてくれないと、私はあまりにも、報われないじゃないですか」 捲し立てる。捲し立てる。 それに従って、電球の輝きは次第に増していく。 「意味の無い人生じゃないですか、まるでこんな、廃棄物みたいな。ゴミみたいな、何の価値もない、ガラクタだ」
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