霞。

7/8
前へ
/51ページ
次へ
ジジジ、と、音がして、僕は思わず息を呑んだ。 背中に冷たい物が流れる。それでも人形は、螺子を巻こうとはしない。 これ以上、喋っちゃいけない。 「でもね、ガラクタはガラクタなりに頑張ったんです。窮屈な日々の中で、まっとうになってみようとしたんです。だけど、なれなかった。私は私になれなかったんです。本来なるべきだった普遍的な私に、なれなかったんです」 バチバチと、幾つも火花が散る。 電球はもう止められないくらいに、とんでもなく大きな光源となって、そこにもう、座っている姿すら見えない。 けれど、わかる。 白熱したフィラメントはもう、限界だ。 「なりたかった。何一つ変わったところの無い、普通になりたかった。私が私であっていい、当たり前が欲しかった。ヒトのように、ヒトのように、ああ――――――」 そして、ぱちんと、弾けるように、
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加