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ジジジ、と、音がして、僕は思わず息を呑んだ。
背中に冷たい物が流れる。それでも人形は、螺子を巻こうとはしない。
これ以上、喋っちゃいけない。
「でもね、ガラクタはガラクタなりに頑張ったんです。窮屈な日々の中で、まっとうになってみようとしたんです。だけど、なれなかった。私は私になれなかったんです。本来なるべきだった普遍的な私に、なれなかったんです」
バチバチと、幾つも火花が散る。
電球はもう止められないくらいに、とんでもなく大きな光源となって、そこにもう、座っている姿すら見えない。
けれど、わかる。
白熱したフィラメントはもう、限界だ。
「なりたかった。何一つ変わったところの無い、普通になりたかった。私が私であっていい、当たり前が欲しかった。ヒトのように、ヒトのように、ああ――――――」
そして、ぱちんと、弾けるように、
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