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「それは、怖いなあ」
君は無邪気に笑った。
心から怖がっているようには見えなかったし、きっと、怖くはないのだろう。
僕は再び、窓の向こうに目を遣った。
夕陽はまだ、沈まない。
一体なんだ、お前は一体、何にしがみついているんだ。
「わからないんだ」
僕はまた、知らぬ内にそう呟いた。
まるで自分が、あのみっともない太陽になったかのような気分で、目の前の巨大な光源と自分との境が曖昧になり、見失いかけて、手放しかけて、それでもまだ、僕は言葉を紡ぐ。
「どうしてか、自分でもわからない」
「何がわからないの?」
何がわからないのかも、わからないんだ。
そう言おうとして、止めた。
どうせ言ったところで、何も変わりはしないのだから。
君には、どうすることもできないのだから。
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