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アヤフミは、しばらくの間、一人でずっと思い出を話していた。リカは、それをただ、うん、うんと聞き続けていた。
しばらくの沈黙の後、ズッと洟をすする音が聞こえた。
『ピロン』
その音が聞こえたのは、すぐ後だったーー。
「アヤ…?何?今の音」
今はリカと通話をしているはず。そのため、通知音が聞こえることはないと思っていた。
もしも別の機種からの音であれば、何故、こんなに
ー耳元で、
聞こえる?ー
「…あ、アカリ?…」
電話口からアヤフミの声がする。
だが、声はかなり遠くから聞こえた。
「アヤ?…アヤフミ?!
ねえ、返事してよ!!」
リカの声は聞こえていないのか。
アヤフミの声は、ガッ、ザザッ、という音が聞こえ始め、それに遮られるように聞こえづらくなっていった。
「…ア……リ、…ん、で。…………リ、……った。…ま…く。
メ…ル、……
今、行くから 」
プツッ、という音とともに、通話が切れた。
あとは、何度かけ直しても、ツーツーという音しか受話器から聞こえなかった。
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