ユウキの章

リカ

通話の最後に言った、今行く、という言葉。
アヤフミは、どこへ行こうというのか。
繋がらない電話を手に、胸の内にもやもやとした不安が渦巻く。

先ほどの電話で辛うじて聞き取れたのは、
　アカリ
　分かった
　メール
そして、　『今行く』　の言葉ーー。

電話を握る手に、力がこもる。

ーまさか、最近噂になっているーー

そこまで考えて、大きく一人かぶりを振った。

確かに、あるメールを受け取ると、現実世界からいなくなってしまうという、都市伝説めいた噂話が、ここ最近あちらこちらから聞こえてきている。しかし、現実には『友達が、別の友達から聞いたらしいんだけど』という、ありがちな噂でしかなかった。
身の回りで起こるなど、絶対にないと思っていた。それは、今も、ほとんど起こり得ないと信じているがーー

さきほどのSNSのグループチャットでも、そんなことを書いている者がいたのを見た。
『ネットの闇に、さらわれたんじゃない？』と。

不謹慎、としか、思わなかった。

だがーー

いてもたってもいられず、着の身着のまま、携帯を手にサンダルを履いて、リカは夜の街に飛び出していったーーー