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『よくある作り話じゃん』
その言葉で、場が一気にしらけた。
ユウキは気にすることなく、続けて文字を打ち込む。
『だからさ、ネットに取り込まれて戻ってこれないって…誰が書けるのかって話でwww』
ログイン数が、一気に3人減った。
今更ながらはまったチャットで、ユウキは空気を壊すことを目的に、オカルト板に時々ログインする。
――くだらね。
光る画面にニヤニヤしながら、『いや、そういうのやめない?』とか『水指すな』といった嗜めを眺める。
――水指すのが目的だって。
オフラインでできない憂さ晴らし。それがユウキがチャットをする全てだった。
今は、ネットの世界に取り込まれた人、という話だったが、ユウキにとっては作り込みがチャチすぎて、格好の餌食でしかなかった。
『あのね、メールが来るとまずいんだって』
それでも、話を続ける者がいた。ハンドルネームは、ミヤ。女だろうか。
『ありえないって。どうせウイルス対策の作り話。はいはいオワコンwねー』
わざとらしく、相手を苛立たせるような言葉を使うのも、何度目かで覚えた。それを証拠に、ルーム内のやり取りが殺伐としていく。
画面の向こうでイライラする相手を想像するのが、とても楽しい。
その時、携帯電話がメールの着信を知らせた。
瞬間、体が硬直した。
まさか。
ネットの闇から、メールが来たのか。今その話を否定したばかり――
恐る恐る携帯電話に手を伸ばす。
光る画面を確かめると――
『こっちに来いよ』
のタイトル。
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