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家に戻ると、ふと諒一のキスを思い出した。明日は、荷物だけ届けて、すぐに帰った方がいいだろう。期待させてはいけない。
次の日、早々と山に登ったが、やはり高岡が先に来ていた。
「荷物置きます」
そのまま帰ろうとすると、諒一は風呂まで手を引いてきた。風呂は、初めて温かかった。
「入ってゆけ」
冷たい水浴びもいいが、湯船に浸かるのもいい。
風呂から出ると、浴衣があり、服は庭で干されていた。子供たちが庭で待っていて、はないちもんめがいいと言いだした。
子供に混じり、はないちもんめをする。『この子が欲しい、この子じゃわからん 相談しよう そうしよう』相談が終わると、俺が指名されていた。
俺は負けて、チーム?を移動する。諒一は、途中泣き出す子供や、転ぶ子供の面倒を丁寧に行い、まるで保父さんのようであった。
「来てくれて、嬉しい」
帰り際に、諒一が初めて笑った。これはバイトで、金が欲しいからだ。そう言いたいが、笑顔が、俺も嬉しかった。
「また来ます」
どうしてなのか、心臓がドキドキしていた。顔も多分赤い。諒一の目を見ることができずに、山を下りた。
山を下りると、志摩の車が止まっていた。志摩が、車の外に出て、山を眺めていた。
「志摩?」
「ここでバイトしていると、お母さんから聞きました」
よく場所が分かったと思う。しかし、暑い山登りの後の、涼しい車は生き返るようだった。
「俺、釣り客相手ですので、朝と夕方だけ忙しいのですよ、だから、明日も迎えにきます」
山登りは時間が不規則になる。
「何時に帰ると言えないからな、電話するよ」
待たれていると思うと、気が焦るので苦手であった。
志摩の母親が、昼食を用意しているというので、志摩の実家に行くと、確かに民宿であった。志摩の部屋は離れで、民宿とは離れていた。
「受験の時に、親が、勉強に集中できるようにと離れを作ってくれて」
でも、別の意味で集中できたと言う。しかも、彼女を連れ込む事が容易だった。
志摩の親が作ってくれた、冷やし中華は大盛りで、しかも、おいしかった。
「おいしいな」
「でしょう、俺の家、料理はおいしいですよ」
だから来てくださいと、志摩が言う。ぽつりぽつりと、お互いにバイトの話をしていた。俺も、謎の山の上の集落の話をする。別に口止めされているわけではないが、話していてもあまりに妙ではあった。
「高岡ですか…」
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