第1章

21/41
前へ
/41ページ
次へ
 車に乗り込むと、エアコンの風を強くした。 「倉田さん、今度の週末は、港で花火大会ですよ。俺、船を出すのですよ。乗りませんか?」  宿泊客のために、沖の小島まで送迎するのだそうだ。船は帰らずに、邪魔にならない場所で待機するらしい。小島では、船が停泊する場所が限られていて、停めていられない。 「俺も、一人では、寂しいですからね」  運転するので酒は飲めないが、弁当は用意します期待してくださいと、志摩は、豪語していた。妹もいいかと聞くと、トイレ事情が悪く女性は止めた方がいいと、志摩がアドバイスしてくれた。男性ならば、マナーは悪いが、暗闇さえあればどうにかなる。 「週末、楽しみにしているよ」  田舎に帰ると、こんなイベントに参加したくなる。都会では、いつも人の中に居るが、田舎ではむしろ、人との接触が少ないのかもしれない。  志摩は、当然のように、俺を自分の部屋へと届けていた。志摩の部屋は、アパートとは違い、台所などない。志摩は、母屋からアイスとペットボトルを持ってきた。 「なあ、志摩、男同士って何をするの?」  志摩に聞いていいのか分からないが、つい聞いてしまった。 「………資料、ありますよ」  志摩が、ノートパソコンを持ってくると、あれこれ検索してくれた。 「こんなこと、本当にしているの?」  結構、詳細に説明されていたり、動画になっていたりするが、他の記事と同様に虚偽ではないのか。感じまくっている姿を見ると、嘘である感じもしていた。彼女としても、ビデオとは、全く違うのは当たり前の原理だった。 「ううむ、俺も詳しくはないですが、結構、興味だけで試している奴は多いですよ。俺は、やるほうだけ試しましたが、まあ、お互い練習ということで、後腐れなく、遊びの延長でしたね」  志摩、でも、結構楽しんだらしい。 「興味が出ましたか?」  興味というのか、今、目の前にある課題であった。 「興味一、不安六、恐怖三、あたりだな」 「嫌悪がなしなら、脈ありですね」  考えると、確かに嫌悪はなかった。それから、志摩とビデオ観賞会になってしまった。あれこれあるが、どれも、受ける側の反応が大きい。確かに、応援?声援?がないと、やる側としては、気分がのらないのかもしれない。 「あんな声は、出すのは嫌だろう」  あんあん言うのは、抵抗があった。 「そうですね、でも、あった方が楽しい」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加