第1章

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 それから、グッズはどこで買いのかで、ついインターネットで購入までしてしまった。 「どうしましょう…俺、倉田さんとは、絶対に遊びではしたくないです」  本気と遊びの差は不明だが、その言葉は嬉しかった。  次の日、山に登ると、高岡の妨害が激しくなっていた。途中、木が倒れているのはまだいいほうで、落とし穴もあり、動物用の罠まで仕掛けられていた。足を挟み込むものだ。  草地に仕掛けられていて避け、手前の岩を避けて着地した先にあるというような、手の込んだものだった。  しかも、見事にかかってしまった。  いつものように地蔵に飴を置き、手を合わせると、足の罠を必死に外した。時間が無いので、怪我もそのままに、走るように斜面を登った。  到着とともに、倒れ込んでしまった。罠に何か塗ってあったのかもしれない。眩暈が酷かった。 「チカ!リカ!仕返ししてきなさい」  諒一の冷めた声が響いた。 「はい、兄様!」  揃った声で、二人がどこかに走って行った。俺は、抱上げられると、奥の間に寝かされていた。諒一が、足の怪我を舐めていた。 「もう少ししたら、治るよ」  そっと頭を撫ぜられていた。手が額に当たると、安心したのか、疲れがどっと出ていた。目を開けたいが、眠くてたまらなかった。 「優哉、怪我だって。痛いかな…」  子供の声が、幾重にもしていた。大丈夫と言いたいが、動けなかった。 「かごめかごめ、だね。優哉に会いたいね」  庭で子供たちが遊んでいた。かごめかごめと、声が響く。ふと、鶴とカメは、自分達のような気分になった。遅いカメは俺だろうか。両方失格になったのならば、跡目争いはどうなるのだろうか。だから、耀という三人目が存在しているのか。 「諒一、アヤは、少しダメだね。子供の面倒もみない。あの男を取り込むのに必死だ」  どこかで聞いたような声がしていた。 「耀、手出ししないでくれ」  でも、と、何か小さな声が続いていた。  ゆっくりお帰りと、諒一は早めに帰してくれた。何か大きな物音がして、振り返ると、山の上では、何かが燃えて、天まで登るような火柱が立っていた。  戻ろうとすると、帰りなさいという、諒一の声が聞こえていた。ルールを守り、山から降りる。  でも、山の上で何が在ったのか、気になってしまっていた。   第四章 同じ夜の下にて
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