第1章

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 そう言えば荷物を運ぶ?程度にしか認識していなかったが、何をするのだろうか。 「明日、面接に行き、詳しく聞いてきます」 「無茶はしないでね」  母は少し悲しそうに笑った。  国道から少し入った場所に実家がある。歩ける距離に、母の実家もある。国道沿いにも、畑が見え、遠くには、いや近くにも山が見えていた。  スーパーに行くにも車が必要で、学校に行くには自転車が必要だった。田舎だったと、今にすると思う。暮らしていた時は、特に不便は感じていなかった。  車の免許は持っているが、空いている車はない。昔乗っていた自転車がそのまま残っていたので、少しメンテナンスをしてみた。どうにか走りそうなので、暫く自転車で駅まで通う事にした。  夜行バスで眠っていたが、やはり疲れが残っていた。居間で横になると、そのまま眠ってしまった。  夜になると、母が早く帰宅し、夕食を作ってくれた。妹達もうるさくつきまとい、賑やかな食事になった。  次の日、バイトの面接とのことで、高岡と待ち合わせをした。実家近くの駅から、三駅で漁港となるが、その手前の駅で降りた。俺は、その駅に降りるのは初めてだった。昔、栄えていたというが、今は駅前にも店一つない。閑散を通り越し、忘れられているような駅だった。  高岡が、駅前のバス停で時刻表を見ていた。 「高岡…」  高岡は振り返ると、手を振っていた。 「ここから、バス?」 「いや、半日に一本しかないようなバス停だったから、驚いていたところ」  確かに、バスの時刻表は、ほとんど空欄であった。 「地図だとこっちだね…」  閑散とした駅前を抜け、戸が閉められている商店の前を歩く。抜け道になっているのか、かなりスピードを出した車が、通り過ぎて行った。車は、皆、忘れられたようなこの街は、ただ過ぎるだけで、先に在る海へと向かっているように感じた。日差しは強く、痛いくらいだった。  道は更に細くなり、又、昇り坂になっていた。 「ここかな…」  横にある、コンクリートの道は、昇りでぷつりと途切れていた。バス停があるが、やはり半日に一本の時間が刻まれているだけだった。閉まっている商店は、開く感じはせず、人の気配も消えていた。 「ここ?」  自動販売機すらない。明日もここに来るのならば、水筒は必需品かもしれない。 「バス停が目印」
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