28人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言えば荷物を運ぶ?程度にしか認識していなかったが、何をするのだろうか。
「明日、面接に行き、詳しく聞いてきます」
「無茶はしないでね」
母は少し悲しそうに笑った。
国道から少し入った場所に実家がある。歩ける距離に、母の実家もある。国道沿いにも、畑が見え、遠くには、いや近くにも山が見えていた。
スーパーに行くにも車が必要で、学校に行くには自転車が必要だった。田舎だったと、今にすると思う。暮らしていた時は、特に不便は感じていなかった。
車の免許は持っているが、空いている車はない。昔乗っていた自転車がそのまま残っていたので、少しメンテナンスをしてみた。どうにか走りそうなので、暫く自転車で駅まで通う事にした。
夜行バスで眠っていたが、やはり疲れが残っていた。居間で横になると、そのまま眠ってしまった。
夜になると、母が早く帰宅し、夕食を作ってくれた。妹達もうるさくつきまとい、賑やかな食事になった。
次の日、バイトの面接とのことで、高岡と待ち合わせをした。実家近くの駅から、三駅で漁港となるが、その手前の駅で降りた。俺は、その駅に降りるのは初めてだった。昔、栄えていたというが、今は駅前にも店一つない。閑散を通り越し、忘れられているような駅だった。
高岡が、駅前のバス停で時刻表を見ていた。
「高岡…」
高岡は振り返ると、手を振っていた。
「ここから、バス?」
「いや、半日に一本しかないようなバス停だったから、驚いていたところ」
確かに、バスの時刻表は、ほとんど空欄であった。
「地図だとこっちだね…」
閑散とした駅前を抜け、戸が閉められている商店の前を歩く。抜け道になっているのか、かなりスピードを出した車が、通り過ぎて行った。車は、皆、忘れられたようなこの街は、ただ過ぎるだけで、先に在る海へと向かっているように感じた。日差しは強く、痛いくらいだった。
道は更に細くなり、又、昇り坂になっていた。
「ここかな…」
横にある、コンクリートの道は、昇りでぷつりと途切れていた。バス停があるが、やはり半日に一本の時間が刻まれているだけだった。閉まっている商店は、開く感じはせず、人の気配も消えていた。
「ここ?」
自動販売機すらない。明日もここに来るのならば、水筒は必需品かもしれない。
「バス停が目印」
最初のコメントを投稿しよう!