十三日の金曜日

3/4
前へ
/4ページ
次へ
換気扇の回る音が聞こえる。 油取りをサボったせいか、妙な節が耳に障る。 ボンっとコンロに火がついた。 タンタンタンと調子のいい軽快な音が響く。 声無き断末魔に身体が震えた。 再度足音が近づいてくる。私のすぐ頭の横で止まった。 彼の手が、私の肩に触れた。 私は布団を蹴って飛び出した。玄関を目指して足を走らせる。 ふと台所に目をやってしまった。 「ああっ、――!」 血、血、血!飛び散った血! 床に、シンクに、コンロに、飛び散った血! しかも、流しには内臓があちらこちらに張り付いている。 力が抜けて、その場に崩れ落ちてしまった。 「捕まえた」 彼のきしゃな腕が、背後から私を包み込んだ。 振り向くと、赤い班の散った笑顔がそこにあった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加