序章

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いつかの時代の どこかの世界の とある国の平和な街に それはそれは可愛いらしい 貴族の女の子がいました。 そして、 女の子には "いいなずけ" がいました。 隣国の貴族の男の子です。 親同士が取り決めた結婚相手。 彼は、少し変わった人でした。 彼と一緒に暮らすことになってから 屋敷から出ることを禁じられました。 女の子が自分の手の届かぬところに 行ってしまわぬように、と 逃げ出さないように、と 彼は閉じ込めようとしたのです。 それから、女の子はいつも一人でした。 話し相手もいない。 これまで仲の良かったお友達とも 外で話せなくなってしまいました。 それからというもの、 女の子は毎日泣いていました。 雨の日も 風の強い日も お日様が顔をのぞかせている日も 声を枯らしてもなお 女の子は泣いていました。
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