序章

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ある日のことです。 コンコンコン、と 控えめで、軽快な響きのノック音が 部屋に響きました。 カサカサ、と 窓の外から草木の揺れる音。 涙を拭くのも忘れて 女の子は窓に駆け寄ります。 すると、窓の縁に沿うように ひっそりと伸びていた木の枝に 見知らぬ男の子が座っていました。 ──やあ、お嬢さん 男の子は片手を上げて、 それから、不思議そうに ──どうして泣いているんですか? ひとりは寂しいのです。 女の子はそう、答えます。 ──外には出ないんですか? 出られないのです。 許してもらえないのです。 小さな声で、女の子は言いました。
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