序章

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次の日、彼は会いに来ませんでした。 その次の日もまた次の日も、 彼は姿を見せてくれませんでした。 あの日以来、 木の枝に登る影も、窓を叩く音も ぱったりと止んでしまいました。 そして、彼が来なくなってから ひと月が経ちました。 ある日の夜のこと。 窓から、まんまるのお月さまが ひょっこりと顔をのぞかせていました。 明日は"彼"と結婚式を挙げる日でした。 そのあとすぐに、隣国にある彼の家に 引っ越さなければならないのです。 もう、この地に戻ってくることも 出来なくなってしまうでしょう。 ひと月、"彼"と会っていませんでしたが それでもまだ女の子は、 彼のことを想い続けていました。 寝てしまえば明日が来る。 そう思うと、中々寝つけませんでした。
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