不気味なメール

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大学生の沙耶(さや)は大人の男性というものに強い憧れを抱いていた。 今年で二十一になるのにも関わらず、精神的にまだまだ未熟な自分を引っ張ってくれる頼りがいのある男性。 沙耶は、大学生活の半分を理想の恋人探しに費やしていた。 その甲斐があってか、憧れを丸っきり形にしたような男性と出会い、そして恋仲になることができた。理想の異性と出会う確率、小数点以下を、見事に引き当ててものにしてしまったのだ。 「それじゃあ出発しようか?」 「うん、よろしく」 今日は、恋人になってから初のデートだった。 隣の運転席から聞こえる落ち着いた声に、助手席の沙耶はにっこり微笑む。 彼の名前は宏太(こうた)。 二十六歳の彼は大手企業に勤めていて、高身長で容姿も良い。おまけに誠実で優しくて、年齢にそぐわず達観した考えを持っている。 何の目的もなく遊び歩いている自分とは大違いだと、沙耶は反省を交えて常々思っていた。 「水族館に行くの初めてだから楽しみ!」 「僕もだよ」 二人は笑顔を浮かべ、車内で楽しく会話をする。 幸せの一時だった。
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