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それから数十分ほど経過した頃だった。
携帯の規則的な振動音が、談笑していた二人の耳に入ってくる。
「ちょっと待って」
「ん、電話?」
お喋りを中断すると、宏太は片手でハンドルを操りながらもう片方の手をポケットに突っ込み、折り畳み式の携帯を取り出してポチポチと操作を始めた。
「……メール?」
「うん」
宏太はなかなか操作を止めなかった。
が、間もなくすると折り畳んで車の速度表示のスペースに置き、再び運転に集中し出す。
何となく気になった沙耶は、
「誰から?」
気軽に質問する。
すると宏太は笑顔で答えた。
「会社の同僚だよ。今度仕事仲間で遊びに行かないかって。
『今はデート中だからまたにしてくれ』って返信しといた」
「……ふーん……」
その言葉に沙耶は嬉しさと気恥ずかしさを感じ、隠しきれない笑みを窓の外に向けた。
車はちょうど、高速道路に差し掛かっていた。
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