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「トイレついでに飲み物買ってくるから、ちょっと待ってて」
時間は三十分ほど過ぎ、二人の乗った車はパーキングエリアに到着した。宏太は助手席に向かって笑いかけると、ドアを閉めてそそくさと離れていく。
一方で、シートベルトも外そうとしない沙耶は怪訝な顔で下を向いていた。決してまだ目的地に着かないのかと駄々をこねているわけではなかった。
ただ一つ、気にかかることがあったのだ。
実はここに来るまでの間、宏太は『携帯が振動すると確認』という一連動作を何度も何度も繰り返していた。不審に思った沙耶が『誰からなのか』と問いかけても、『同僚がしつこい』、『スパムメール』などの一点張り。
初めは納得していたが、回数を重ねるごとに心に押し込んだ疑惑は膨らんでいった。
怪しい。
本当に彼の言った通りなのだろうか。
もしかして別の誰かなのでは?
まさか誠実な人がそんな嘘をつくことはないと信じる反面、疑ってしまう自分がいるのも確かだった。
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