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汚れはもちろん、しわでさえもあれば、今までの使用人にしてきたように徹底的につついてやろう。
兄さん以外からの命令は、排除する。
しかし、ピシッとアイロンのかけられた服に粗は見当たらなかった。
俺は舌打ちをすると、シャツに腕を通した。
「王子、時間です」
寝室のドアがノックされた。動きにくい正装に身を包み、ドアを開ける。
「お前、名は?」
襟を正ながら、使用人を見ずに尋ねる。
「アリスと申します」
1ヶ月近く、身の回りの世話をやっていたが、名前を知ったのは今が初めてである。
「……アリス、」
俺は頭二つぶん小さいアリスの目と、目を合わせる。かがんでアリスの唇を奪った。途端に現れるバラの証。アリスの首筋には、紫色のつたが這った。
「これで俺は見合いを受ける必要はなくなった」
俺はにっこりと微笑み、アリスを見やった。
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