第1章

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そうしてしばらく、どれくらい走っていたものか。 とにかく先ほどの場所からはかなり離れた所まで来ていた。 俺にはもう走る気力は残されておらず、とうとう地面に座り込んでしまった。 全身はぐっしょりと汗にまみれ、ふくらはぎが火のように熱かった。 ここが何処なのかも今が何時なのかも解らなかった。 とにかく時間だけでも確認しようと、俺はスマホを取りだした。 その時、計ったかの様なタイミングで電話がかかってきた。 一瞬ビクッとしてしまったが通知画面をみるとお袋からの電話だった。 「なんだお袋かよ。」 安心して電話にでるといつもの声が聞こえてきた。 『アンタ今どこにいんの?今日帰ってくるんでしょ?』 そう言えば昼間、帰る旨を連絡していたのを忘れていた。 「ああ。もう地元に帰って来てるよ。今ちょっと色々あって、もうすぐ帰るよ。」 どうせお袋に言っても信じてはもらえなさそうなので黙っておくことにした。 『まったく、たまに帰るって言ったと思ったら結局寄り道してんのね。無理に帰ってこなくても良いわよ。』 お袋のキツめの皮肉も、こんな時だと平常心を取り戻させてくれる。 「帰るよ。ちゃんと帰るから、鍵開けといてくれよな。」 とにかく今は早く家に帰りたい。 それだけだった。 『お母さんね、マルヤマさんのとこに呼ばれてて今から行ってくるからね。知ってるでしょ?ご近所のマルヤマさん。』 マルヤマさんがどんな顔だったかは覚えてなかったがすぐ近所に住んでいることは解っていた。 10分くらいで戻るから鍵は開けておくと言ってお袋は電話を切った。 スマホをポケットにしまって俺は再び立ち上がった。 落ち着いて周りをみてみると大体何処にいるかが検討がついた。 大丈夫、俺は帰れる。 気を取り直して俺は歩き出そうとした。 その時だった。
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