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『シューッ、シューッ』
まただ。
あれだけ走って来た筈なのに。
またもやあのおぞましい塊が、俺の目の前に立ちはだかっていた。
「なんなんだよ。なんなんだよもう!」
俺は最早怒りすら感じていた。
なぜこんなワケの解らない物に振り回されなければならないのか。
俺は手近にあった石を手にとって塊めがけ投げつけた。
思いのほかのコントロールで、石は塊に直撃した。
『ピギュェェェェェェェェェ』
その瞬間、聞いてこともないほど耳障りな悲鳴が上がった。
見ると、塊から黒い血液の様な液体が流れている。
首だけの動物たちの鳴き声も更に大きくなっていく。
「なんだよ、なんかヤバいぞ、ヤバいヤバいヤバい」
『ピギュェェェェェェィィィィ』
ソレはしばらくデカい声で鳴いていた。
その金切声はムカつく程の耳触りで、俺に怒りを忘れさせ束の間失っていた恐怖と嫌悪感を取り戻させた。
ふと、金切声が止み静寂が訪れた。
しかしその瞬間、俺は異様な空気を察していた。
目の前の黒い塊が発する雰囲気が明らかに変わった気がしたからだ。
塊がこちらに向き直った。
いや、正確にはどこが正面かなんて解らないのだがなぜだかこちらに向いている気がした。
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