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ズルッ。
重たい荷物を引きずる様な音だ。
ズルッ。
もしくは誰かが足を引きずる音。
ズルッ。
もしくは大型犬くらいのナメクジが、地べたを這いずる音だ。
ズルズルズルズルズルズルッ。
次の瞬間、ヤツは突然もの凄い素早さでこちらに這ってきた。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
アンタさ、ゴキブリって嫌いだろ?
好きな奴なんてあんまりいないよな。
アイツらがなんでこうも人間に嫌われてるか解るかい?
フォルム?
色?
生命力が強いから?
まあ色々あるんだろうけどさ。
俺はこう思うね。
とんでもなく動きの早いモノってのはさ、とんでもなく恐ろしいモノなんだ。
目で追えないってのは、予測がつきにくいってことだ。
だから人間は自分よりもずっと小さなあの昆虫風情に、あれほどの嫌悪感を抱くんだろうよ。
そしてこの時の俺は、まさにその何倍もの恐怖を味わっていた。
大型犬くらいのナメクジだと思ってた奴が、大型犬くらいのゴキブリだったわけだから。
そしてヤツはついに、こっちを目掛けて走ってきたんだ。
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