第1章

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先ほど視界の端で捉えたあの黒い塊。 アレが見当たらないのだ。 確かここに居たはずだ、という所に居ない。 記憶違いだったかなと思って通り過ぎたその時 背筋に一瞬だけ寒気が走った。 あった。 あの黒い塊だ。 しかしどう考えてもおかしい。 さっきあった場所とは明らかに違う場所にある。 何故そう言いきれるか? 最初に見かけた時は道端にあったんだ。 でも二度目に目にした時、ソレは電信柱の下にあった。 一度目は何も無い道端で二度目は電信柱の下。 いくら視界にギリギリ入るレベルだったとは言えこんな間違いをするものではない。 明らかにその黒い塊は移動していた。 まあそれでも、誰かがゴミの捨て場所を間違えたかなんだかしてその後にまた電信柱の下に移動したんだろう。 そんな風に考えた。 普通はそうだろう? だって俺の人生とこの黒い塊に一体どんな関係があるっていうんだ? あの時はそう思っていた。 一瞬だけ気にはなったが俺は家路を急ごうとした。 その時ふと、妙な音が聞こえた。 「ャ…」 なんの音だ。 「ャ-…」 小さくてよく聞き取れない。 なんだか気味が悪くて俺はつい立ち止まってしまった。 音は例の黒い塊からしてるみたいで俺はイヤイヤながら好奇心に負けてしまい、近付いて確かめる事にした。 そして今度は、その音がハッキリ聞こえた。 「ニャー…」 間違いなく猫の鳴き声だった。
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