第1章

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『シューッ…』 「は?」 『ガアーッアーッ』 『ワンワンワンワンワン…』 『ゲェー、ゲェー』 驚いたことに、頭部だけのはずの生き物たちはみな鳴き声をあげている。 真っ黒な塊からキノコの様に生えた動物たちの頭部。 その全てが各々の鳴き声で鳴いている。 それに呼応するかの様に、羽虫は蠢き油虫は羽をバタつかせる。 なんと言っても臭いだ。 むせかえる程生臭い、臭気をソレが漂わせている。 朝方の歓楽街を通った事があるかい?それが解るなら想像に容易い。 「ぅおおおぇぇぇ」 俺じゃなくたって、こんな光景を見たら吐いちまう。 胃の内容物を全て吐きだしている最中も鳥肌が収まらなかった。 しかし、胃が空っぽになった事で頭は混乱から立ち直った。 この塊は相当に気色悪いが俺自身とは無関係だ。 とにかくここから離れよう。 幸い手も触れていない。 もしも変な病気の媒体になっていても、俺に感染している可能性は低い。 俺はふらつく足で体制を立て直すと、後ろも振り返らず走り出した。 脇目もふらずただひたすらに。 ひたすらに。 ひたすらに。
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