2人が本棚に入れています
本棚に追加
『シューッ…』
「は?」
『ガアーッアーッ』
『ワンワンワンワンワン…』
『ゲェー、ゲェー』
驚いたことに、頭部だけのはずの生き物たちはみな鳴き声をあげている。
真っ黒な塊からキノコの様に生えた動物たちの頭部。
その全てが各々の鳴き声で鳴いている。
それに呼応するかの様に、羽虫は蠢き油虫は羽をバタつかせる。
なんと言っても臭いだ。
むせかえる程生臭い、臭気をソレが漂わせている。
朝方の歓楽街を通った事があるかい?それが解るなら想像に容易い。
「ぅおおおぇぇぇ」
俺じゃなくたって、こんな光景を見たら吐いちまう。
胃の内容物を全て吐きだしている最中も鳥肌が収まらなかった。
しかし、胃が空っぽになった事で頭は混乱から立ち直った。
この塊は相当に気色悪いが俺自身とは無関係だ。
とにかくここから離れよう。
幸い手も触れていない。
もしも変な病気の媒体になっていても、俺に感染している可能性は低い。
俺はふらつく足で体制を立て直すと、後ろも振り返らず走り出した。
脇目もふらずただひたすらに。
ひたすらに。
ひたすらに。
最初のコメントを投稿しよう!