第1章

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「ハァハァハァハァ」 先ほどあの黒い塊と遭遇した場所から500~600メートルは離れたであろう場所にやってきた。 「ハァハァハァハァ」 たかだかこれくらいの距離なのに随分と息が上がっていた。 無理もない。 あんな物を見て正常でいられる方が難しい。 走ってきた方向をしばらく見つめていたが、あの塊が追いかけてくる様子はなかった。 俺は人心地ついて、タバコを吸おうとポケットに手を入れた。 大丈夫、なんでもない。 きっとアレは誰かが何かのジョークで作った物に違いない。 仕掛けは解らないが何かの機械で動いているのだろう。 そんな風に片付けて、家がある方向に向き直った。 そして視界が前方を捉えた時、俺はタバコを口から落としてしまった。 『シューッ』 塊は確かに追いかけて来てはいなかった。 どういうワケかその塊は、俺の前にいた。 遥か後ろに振り切った筈の塊がこれから進もうとする先にいて、先ほどと同じ様にズルズルと蠢いている。 なぜ、前にいるのか。 同じ様に見える別の物なのか? はたまた、別の道を通って先回りされたのか? 色々な考えが頭の中でこんがらがり、俺はパニックに陥った。
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