第1章

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『こちらが本日の討伐報酬で御座います。お納めください』   古びたキャッシュディスペンサーから、これまた古びた紙幣が吐き出される。貨幣経済だなんだと錆び付いた議論を持ち出す余地もなく、星純は撒き餌のように差し出された紙たちを掴みとる。どこかの文学巨匠くさい額のほくろが7つも並ぶと、ようやく達成感らしいものを感じて星純は一息、  「……いやまあ、常識的に考えてさ。強盗はよくないよね?」  呆れ顔でため息をつく。両脇にはホウけた顔のハチとミツ。  目の前にはやたらにレトロを押しつけるような、ディスプレイが顔を兼任するディスペンサー。それを囲う建物は、廃材で建てられたであろう吹けば飛びそうな寄り合い所。  そして後ろに一集団。各々が各々、物騒な得物を担いで星純たちを埋めるように取り巻いている。  「いやさか、ちょいと取り分の話しをしようと思ってよ?」  聞いてくれんかね? そういって集団の真ん中を割って顔を出すのは、ぼさついた髪と手入れのされていない髭をたくわえた中年。小汚いなりは大体に共通して言えることなので省くとして、右手に握る物騒な黒光りに眼が止まる。遊底、照星、グリップ、引き金。わざとらしく、目に留まるようぶらつかせて。  「あのよう。確認だけど〈械獣〉ぶっ殺すのに必要な要素って、なにか知ってっか? てか、答えを聞くために質問してるわけじゃ無いから単刀直入に言うけどよ、つまりそれは戦略なわけよ。わかる?」  言って聞かせるような優しさはない。つらつらと、言いたいことだけを言いたいという身も蓋もない欲求が全面に顔を出して、男は星純たちに不満げな表情を向ける。
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