第1章

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 「考えるんだわ、どうやったら勝てるのか。あの機械の怪物どもをどうやったら仕留められるのか。地雷なり機関砲なり揃えたところで、しっかりとした戦略戦術がねえとイカンのよ。アンタみたいに遅れて乗り込んだところに、たまたま俺達の追い込んだ熊さんが通りがかるようなラッキーパンチは想定しないんだわ」  ラッキー。確かに、その通りだ。  現実に遅れたのはハチの寝坊の所為だし、ミツの髪セットに時間を取られた所為だし、行きがかりに二人して忘れ物をした所為だし。お気に入りのRPGー7忘れたとか、よく意味が分からん。  なにより出発直前に、よりにもよって二人してトイレに駆け「それは兄ちゃんでしょ!」込んだのそうおれだ。なにが悪い、睨むな小僧。  とにもかくにも、要はかなりの幸運に恵まれていたという、こちらもこちらで身も蓋もない有り様だ。おかげさまでハチに心を読まれる始末だし。と、星純は自分の心情を心ゆくまま吐露し終えると、面倒くさそうに頭を掻きながら言う。  「んで、要はなに?」  「今日だけで20人は仲間が死んだ」  「それで?」  「少しでも金が要る」  「だから?」  「てめえら、とりあえず身ぐるみ全部置いて……!」というわけで、これが威勢の良かった男の最後。  10分をかけて一人ずつ、計32人の荒くれをボコボコにして、星純は疲れ顔でため息ひとつ。ちなみに、ボコボコにするのが3分、身包みを剥ぐのに6分、もう勘弁してと泣き喚く男を裸で吊し上げるのに1分 と、内訳はそんなところ。  よくある話しだ。騙しも人死にも日常茶飯事。きっと戦争以前の世界も、表立って事が起きていないだけでーーあるいは努めて、意識していなかっただけなのかもしれないけれど、そんな光景は石ころのように転がっていたのだろう。裸で逆磔は、まあそう無い景色だけど。  「に~~ちゃん! こっちは終わったにゃん! お金とナイフとざっくざく!」
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