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『あらやだ! 可愛くないわね! そんな子に育てた覚えはないですよ!』
「どこのママさんだ……」
『ママの言うことは聞いて欲しい、反抗期の息子を想うママさんです』
「つまりワガママだな。いや、洒落じゃないが」
『で? お礼は?』
「アリガトー」
『あら綺麗な棒読み。今度はあなたを折り曲げましょうか?』
「やってみろ」
ドゴン。光の球が腹にタックル。肉体の奏でる音じゃない。
鍛え上げた星純の腹筋は、板チョコ並みの強度しかなくなっていたようで、華麗な悶絶が身体をくの字に曲げている。ギリギリ、膝は付かないで。
『もう! そんなことで大丈夫なのかしら? 命の期限は短いのよーー特に貴方はね』
「……分かってるよ。そんなことは」
分かってる。念を押すようにもう一度つぶやき、星純は屈したままだった膝を立て直した。光の球は、そんな星純のまわりをくるくる回る。被我の間隔を律儀に保って、まるで公転でもしているかのよう。
その向こう、寄り合い所の入り口で、ミツとハチが手招きしている。豪快に、二人そろって飛んだり跳ねたりしているのは、些か頭の痛い光景だ。
星純は、ひとつ溜め息を絞り出して歩き出す。今日だけで何回目だろうか考えながら、後ろに付いた光球の言葉を耳にする。
『ーーこれで更新。貴方の寿命は、今からきっかり75時間。言えた義理じゃないけども、残り時間は大切に』
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