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空を見上げる。夜空を見上げる。そこにたくらむ星々を見上げる。
何万年と、そこここに輝く光たちは夜の闇の座標として鎮座していて、無慈悲なまで整然とした瞬きはいくつもの物語を紡いできた。
神の物語、人の物語。神秘のベールに包まれた、あの黒に向け飛び立って行く物語。
それは同時に、歴史でもあるらしい。その為に必要な、努力と失敗と現実に突きつけられた犠牲のはなしだ。
あるいは、必要悪のおはなしだ。必要な悪というのも、存外レーゾンデートルのはっきりしないものではあるけれど。
けれど、必要悪の名乗りをあげる権利をおれは持ち合わせていると思う。だって、それはそもそも誰かに決め付けられるものでもないから。自らが必要であると証明する方法論に、善も悪も関係ない。
ただ、絶え間ない欲求が、圧倒的な執念があればーーひょっとすると、それさえ求めるところでは無いのかもしれないけれどーーいくらでも存在証明は可能だ。少なくともおれは、そうしていたから。
ゴミ溜めのような街で育った。人の皮を被った獣たちの間で、おれは生き抜いてきた。ここにいると主張し続けなければ、刹那のうちに自分自身が消え去る。
あの天頂を飾る星たちも、そんなことを考えているだろうか。いまとなっては知る由もない。元も子もないけれど、それらは全て言葉にしか過ぎないのだから。
だから多分、おれ自身も、そうした言葉の一部でしかない。自覚があるわけでなく、そう直感してみる。今でこそ、剥き出しの感性で分かることができると思うから。
ーーなにせこれは、おれが死に果てるまでの物語なのだし。
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