第1章

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フォーバイフォーが疾走する。ガラクタ山から奇跡的に救出された骨董品が、無骨な体躯で腐臭の漂う空気を切り裂く。  シンプルさこそが頑丈の証のように、直線で造られた四角いフォルムは、デコボコとしたあぜ道を上へ下へと跳ね上がりながら進んでいく。サスペンションの調節は比較的良好なのだろうけど、精密機器なり物騒な得物なりで雪隠詰めの車内ではたまったものじゃない。  『目標、補足した! 依頼通りの〈機熊〉だぜ!』  やたら高揚とした怒鳴り声が、天井から吊した無線より飛び込んでくる。声色は嬉々として、しかしストレスまみれの緊張からくる上擦りがなんとも締まりの悪い。  下手に大声出すんじゃねえと、鬼塚星純(オニヅカ セイジュン)は不満げに舌打ちする。ただでさえ依頼時間に間に合わず遅れたスタートダッシュなのに、不機嫌を後押しするような興奮はやたら鼻についた。そこまでハイになる必要も無いだろうに。  〈第二○八執政府〉統括の独立衛星都市「ソドム」は、日々の生活さえままならないほどイカレている。盗み奪い騙し合い、だれそれが死んだの殺されたのにはいたく鈍感でしかいられない、そんな街。とはいえ別段、そのくそったれに文句を垂れたいわけじゃない。
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