第1章

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   その気になれば砂も食うような連中。それを栄養としてエネルギーに変換できる身体。後付けの機械で大体の意味を奪われても、一応は生き物なのだから困ったものだ。  けれどだからこそ、至極当たり前な人間の肉体である星純にも、勝ちの要因は転がっている。   「バカでけえショットガンみたいなもんか……スラッグガンっつたっけかな」  馬鹿馬鹿しい。そう毒づいて、星純は駆け出す。  機熊は次弾を発射するよう唸りをあげる。大口を開け、狙いを澄まし。  そして破裂音。唐突な衝撃にバランスを崩され、機熊の身体は真横にのけぞった。必然、砲塔の狙いは星純を外れ、散弾は再び地面を抉る。  ゴトリと、機熊の首から首輪が外れた。元々がしっかり首筋に固定されていたらしく、夥しい血のりが機熊から溢れていた。  遅効性のコンピューターウィルスだと、それの販売人は嘯いていた。かなりシビアな命のやり取りに、そんな遅れは意味があるのかと星純は問いただしたけれど、まともな答えは返ってこなかった。  既に用を為していない戦術リンクへのアクセス。火器管制システムへのクラッキング。最終セーフティの不正解除。等々やりきるにはどうしても幾らかの遅れがでるらしい。  その上、簡易的なファイアウォールが以後のアクセスをシャットアウトするから、〈械獣〉一体につき使えるウィルスは一度のみ。まるで話は理解出来なかったけれど、ようは対〈械獣〉用の切り札だということは理解できた。それを年端もいかない、ハニーでブラウンな女の子に託すのも、かなり悪い冗談だ。  ので、星純は全速力で駆け抜け、全速力でのスライディングをかます。砲撃を失った機熊の機先を制する意図もあるけど、股下を抜け後背を陣取るには少々訳ありでもある。  機熊が、その巨躯に見合わぬ俊敏な反転を見せつける。大凡5メートルの距離で正対して一瞬。  機熊がのっそりと立ち上がり、その残された最大の武器である大きな爪で星純を引き裂こうと振り上げて二瞬。  豪砲が、いきなりなタイミングで機熊の背中を貫いた。
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