第1章

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弾の種類は粘着榴弾。掻い摘むと、目標に当たって、くっ付いて、バカみたいな衝撃を内部に叩き込む爆裂兵器。射手はもちろん、にょきりと細長い筒を覗かせるフォーバイフォー。  やったとか、当たったとか。そういう歓喜の声が聞こえてきそうな空気を感じる、その前に星純は機熊の懐に飛び込む。  力の無い腕は宙を泳ぎ、目的を失った爪は、主の致命的な状態を告げている。星純は、その爪を手にとって。  「くたばれ晩メシぃ!」  締まりの悪いかけ声と共に、中型車なみの体躯を担ぎ上げる。  全身の筋肉が軋みを上げ、けれどしっかりと持ち上げられた機熊は勢いのまま脳天を地面へ叩き込まれた。  いわゆる、背負い投げというヤツ。より正確には、一本背負い。  結果、機熊の頭はアスファルトに巨大なひび割れを残し、盛大にめり込んだ。  インスタントなマシンな分、機械中枢の強度は脆弱で派手な衝撃を加えると簡単に機能は停止する。おまけに肉は食料になって便利と、かなり一石二鳥な存在が〈械獣〉というもの。  機熊はいよいよもって動かない。討伐成功。しばらくして、星純はひとつ大きなのびをしてから大きく手を振った。遠目から迫るランドローバーはかなりのスピードだ。  「今日も無事、生き残れましたよっと……悪いな」  星純はそう、機熊に一瞥くれてから呟いた。恐らくは聞こえていないと思うけれど。  「ーーんぁあッ! そんなこたぁ分かってんよくそったれ! 今更言うなや!  おれには時間が無ぇんだからよぉ!」  それに、無事というのも少し違う。むしろ、問題はこれからだったりするのが、星純の悩みどころだったりするわけで。
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