case1:JS

10/13
前へ
/14ページ
次へ
どういうこと? ゆーちゃん、他に好きな人でもいるの? 浮気でもしてるってゆーの? 純粋じゃないって……。 あの笑顔も? やさしい言葉も? 愛しそうに見つめる瞳も、楽しそうなそぶりも? 全部偽りだったって言うの? 「……ジュンちゃん……あのね……」 僕がうつむいて唇を噛むのと同時に、ゆーちゃんが言った。 「かえらないで……?」 ………………へ? 僕は耳を疑った。 な、なに!? いま、なんて!? 慌ててゆーちゃんを見ると、相変わらず涙に濡れた、それでいて健気なまなざしが待っていた。 「……ゆーちゃん……それって……」 「今日……泊まってほしい ……」 ………………は? 待って……! ちょっと待って! 夢みたいな言葉をもらって心臓が破裂しそうだった。 僕はもうあまりに予想外すぎて、唖然としちゃっていると、ゆーちゃんが突然かぶりを振った。 「……あの、えっとごめんなさい……どうしよう…… やっぱダメだよね……?」 「えっ?」 「あああもう、なに言っちゃってるんだろう……!女の子からこんな……こんなこと言うべきじゃないって分かってたのに……やっぱひいたよね……?」 真っ赤になって取りつくろうその仕草が、僕を打ちのめした。 半ばゆでダコのようなゆーちゃんの腕を引いて、夢中で抱き寄せる。 もう無理。 冷静でなんかいられない。 ゆーちゃんがそんなふうに思ってたなんて。 まさかそんなふうに思ってたなんて……! 「……もしかして、前から思ってた?」 耳元で囁くと、ゆーちゃんが小さく頷くのが分かる。 「…………マジかよ~~~ ……なんだぁ~~~……」 今まで不安に思っていたのがまるで勘違いだったと分かって、なんだかもう天地が返ったような気分だった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加