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「やっぱり、ここにいたのね」
声を掛けると、携帯電話の画面を凝視していた聖貴はびくりと顔を上げた。
雨降りとはいえ、夏至の白んだ夕空の下、その顔は血が全て抜き取られたようにほの白く浮き上がって見える。
まるで日暮れの廃ビルの屋上に現れた幽霊少年といった風情だが、生身の人間である証拠に、その足には泥のこびり付いたスニーカーを履いていた。
いや、スニーカーばかりでなく黒いジャケットの袖口やジーンズの膝下全体が泥や砂で汚れている。
「河原はもう通行止めで入れなかったの」
ガシャッ。
歩み寄っていく私の足元に、メールの文面を示したままの携帯電話が投げつけられた。
“From 間宮未来 06/22 17:46
もうすぐそっちに着くから、待ってて”
さっき送ったメールだ。
拾い上げた携帯電話の画面を目にすると、何だかおかしくて笑えた。
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