第一章:着信

2/4
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
部屋に戻ると、薄暗く陰になった机の上で小さな光が点滅していた。 緑、青、緑、青……。 小さな光は二つの色を行き来する形で点滅する。 もう夕暮れ時で、雪模様のレースカーテンを引いた窓の外では小雨が降り続いている。 そうだ。 今朝は、スマホを家に置いて学校に行ったんだった。 そう思い出しつつ、充電器のコードをスマホから引き抜く。 受話器のアイコンの上には「1」、閉じた封筒のアイコンの上には「2」と表示されている。 傾いた受話器のアイコンをタップすると、表示された着信履歴は「1時間前 木嶋聖貴(きじまきよたか)」。 予想通りの名が出たのに、むしろそれゆえに背筋がぞくりとして、手の中で文字列が震える。 ホーム画面に戻して、閉じた封筒のアイコンを叩く。 案の定、全体の受信ボックスではなく、「セイキ」と名付けられたフォルダの上に赤く「2」の数字が示されていた。 胸を刺されたような感じに襲われる。 震える指で、赤い「2」の数字を弾く。 開かれたフォルダの中には、電話の着信履歴と同じ「木嶋聖貴」の名が二つ並んでいた。 後から来た方にはクリップの印も付いている。 読んだ傍から削除してしまうから、この「セイキ」フォルダにはいつも未読のメールしか入っていない。 本当は新しい方から確認したいが、あいつの要求を正確に把握するためにも、古いメールから開く。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!