第一章:着信

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“From 木嶋聖貴 06/22 10:10  六時にいつも通り川原に来て。学校は五時には終わるから、そのまままっすぐ来ればいい。すっぽかしたら、分かるよね?” 疑問文で終わった文面の下には、誇示するように笑う半裸のあいつの首に抱きついて、引きつった笑顔をこちらに向けている下着姿の私が映っていた。 よく目を凝らせば、私の目も鼻もうっすら赤くて泣いた後だと知れる。 撮るのを嫌がって、背中に思い切り蹴りを入れられたからだ。 でも、事情を知らない人が見たら、バカな女子高生が男にのぼせ上がって、むしろ喜んで撮らせていたみたいに思うんだろうな。 それこそ、こいつの思う壺だ。 聖貴の下には、そんな風にして撮った私の写真や動画が山ほどある。 このメールの写真は、まだその中でも控えめな部類だ。 ゴミ箱のアイコンを弾くと、画面いっぱいに映っていた二人の笑顔は消え、フォルダの中は空っぽになった。 仮に無理やり撮らせた真相が知れたところで、私がそんな姿を記録に残した、そもそもそんな男と関わりを持っていた事実に変わりはない。 何度、考えても、この結論にぶち当たると、目の前が暗くなる。 せっかく家に戻ったばかりだが、また、出ることにした。 彼が来いというのだから、仕方がない。 今日は母も夜勤だから、遅く帰っても、何の問題もないのだ。
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