第三章:送信

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大通りに出ると、雨のせいか道が異様に込み合っていた。 車道はもちろん、歩道もまるで縁日のように色とりどりの傘を差した人でごった返している。 手にしたスマホを確かめると、液晶画面が表示する時刻は「17:45」。 道が空いている時なら、河原までは十分も懸からないけど、この様子だと十五分で着く自信はない。 “もうすぐそっちに着くから、待ってて” 急いでメールを打って送信する。 具体的な時刻は指定できないし、その必要もないから、「もうすぐ」とだけ書く。 あいつが要求しているのは、私が六時きっかりに到着することではなく、もう一度顔を合わせる意思を示すことなのだから。 “1件Eメール送信しました” 画面はパッと明るく送信完了のメッセージを表示して薄暗くなった。 誰がどんな内容を書き送ろうが、機械はマニュアル通り動くのだ。 取り敢えず約束の場所に行く意思を示しておけば、あいつも早まった行動には出ないだろう。
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