プロローグ 白紙の本の物語

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 猫に続いて自分の朝食を済ませ、仕事の準備に取りかかる。彼女――グラン・シャリオはルティルボールに住む人間の女性だ。小説家志望の彼女は、こうしたふわふわとした夢想の世界と、貸本屋と針子のアルバイトという現実の世界を行き来しながら日々を過ごしている。  今日は貸本屋の日だ。腰ほどまである長い髪の毛を結ばず、耳の上辺りにリボンをつけて少しばかりのおしゃれをする。以前はこの程度の事もしなかったのだが、彼女が「お嫁様」と慕うキャラクターに出会って以来、少しだけでも気にするようにしたのだ。 「それじゃあ行ってきます」  ビスクドールと愛猫に深々と頭を下げてそう告げ、グラン・シャリオは家から出た。  今日はよく晴れている。天空と統率の神エレンホスの機嫌がいいらしい。青々と晴れ渡った空と心地の良い空気は、グラン・シャリオがルティルボールを好み離れない理由の一つだった。
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