プロローグ 白紙の本の物語

4/95

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
 度の強い眼鏡をかけた女性は、グラン・シャリオの言葉をうるさそうに聞き流していた。彼女がこの貸本屋のマスター、マーガレットだ。グラン・シャリオよりも数歳年上程度の若い女性だが、グラン・シャリオよりも内向的で外見に頓着しないため、女性らしさはあまり感じられない。  元々この店はマーガレットの祖父が経営していたのだが、ぎっくり腰を起こして昨年店を譲ったのだ。以来彼女は、自分の思うままに店を砦として引きこもっている。  彼女はそれでもいいのかもしれないが、アルバイトのグラン・シャリオとしては困る。何しろ定期的に借りられている賃料だけでは、マーガレット分の生活費と店の維持費程度にしかならないからだ。前店主の頼みもあって、せめて自分がアルバイトに来ている日ぐらいはまともに営業させないと、明日のご飯に困ってしまう。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加