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しかしグラン・シャリオは、そんな観点から何か言うべきではないと思った。名を呼ぶ彼の声は甘く、その視線は優しい。頬に触れ、聞こえない声を聞こうとする青年の姿を、グラン・シャリオには否定出来ない。むしろ誰に見られ非難される可能性を負おうとも、死してなお手元に置き続け、愛を示す青年に尊敬の意を抱く立場だ。
グラン・シャリオは自身を落ち着けるため、一つ深呼吸をすると、スカートの端を持って一礼をした。
「……仲睦まじいところ、お邪魔して申し訳ありません。その、お言葉通り、見学してたら迷ってしまったんです。よければ人がいる方を教えていただければ、と……」
少年を「ない」ものとして扱わないよう、言葉を選ぶ。青年は少し驚いたように目を見張って、ふわりと月が溶けるような笑みを浮かべた。
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