プロローグ 白紙の本の物語

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「こちらまでわざわざ来てちょうどいいも何もないでしょう。彼を連れて、不用心ではないですか?」 「この辺りで止まる予定だった。それに私は見られても困らない」 「……周りが困ります。分かっているでしょうが、立場を考えて行動なさいますよう」  ああ、やはり他の人には認められていないのか、と少ししょんぼりする。分かっている、死者を連れ回すほど深く愛する事は、世間一般からは認められていない。グラン・シャリオのように架空の人物を愛する事もまたそうだ。間違いなく貴人である青年がそのような愛に迷っているなんて知られたら、デメリットしかないはずだ。 「どうも見学コースから外れたらしくてな。彼女を表まで案内してくれないか?」
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