プロローグ 白紙の本の物語

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 慣れているのか、青年は小言を聞き流し、少し横にどいてグラン・シャリオに前に出るよう促した。落ち込みかけていたグラン・シャリオは、慌てて一歩前に出る。女性は青年に呆れたような目を向けたが、言っても聞かないと知っているのか、グラン・シャリオに一礼をした。 「仰せつかまつりました。では、行こうか」 「あ、はいっ、よろしくお願いします」 「――ああ、少し待て」  きびすを返して歩き始めた女性を追おうとして、青年に呼び止められた。送りだそうとしていた人物に呼び止められて、グラン・シャリオは振り返る。 「君の名は?」 「え? あ、えっと、……グラン・シャリオです」  一瞬本名を名乗るべきか迷って、結局ペンネームの方を名乗っていた。村でもこれで呼ばれているため、ペンネームの方が馴染み深くなっていて、本名が自分の名ではないように感じるからだ。青年は「グラン・シャリオか」とこちらの名を呼んで、一つ頷いた。
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