プロローグ 白紙の本の物語

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「私は大輝=アリイェメレク。こちらはハーミズだ。また後日ゆっくり話したいものだな」 「あっ、えっと……そうですね、機会があれば」  ルティルボールに住んでいるグラン・シャリオが王都にくる機会も、王城に訪れる機会ももうほとんどない。分かっていたが、否定する事はないだろうと肯定的な返事を返した。実際彼とはもっと話してみたい。その愛について、聞いてみたい。 「大輝様――」 「引き留めてすまなかったな。ではアリエス、不備のないように」 「……分かりました」  小言を言いたげだった女性は、命をこなせと先手を打たれて黙ってまた歩き出した。今度こそ迷子から解消されると、女性の後を追いかける。 「……分かっているとは思うが、この事は他言するなよ」 「え? ああ、はい、話さないつもりでしたよ?」 「そうか、それならいいんだがな。君を斬らずに済む」
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