プロローグ 白紙の本の物語

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 移動中、女性に釘を刺された。誰にも否定されたくない愛のために、誰に言うつもりもなかったが、女性からしてみれば、おそらくは主人の醜聞を言いふらされるかもしれないと警戒するところだろう。脅しめいた言葉に背筋が寒くなったものの、直後、女性はこちらに顔を向けてクスリと笑った。 「女性を斬るのは趣味に反する」 「うぇ?」 「特に大輝様に気に入られるような女性なんて、私もお近付きになりたいが、時間がない。次は私も同伴させてもらいたいものだな」 「は、はぁ……?」  てっきり彼の知られたくない秘密を見たグラン・シャリオを邪険にするかと思っていたのに、女性の反応は柔らかな、というよりはややねっとりしたものだった。女好き、なのだろうか。そういう人種がいると理解しているし、否定するつもりもないが、自分に向けられるとおさまりが悪い。グラン・シャリオにはもう心に決めた人物がいるのだから。
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