プロローグ 白紙の本の物語

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プロローグ 白紙の本の物語

 流行りや派手な事とは縁がない、どこにでもある片田舎の農村、ルティルボール。今日も朝日とともに鶏の高い鳴き声が村中に響き、一日が始まる。 「うぇ」  それから遅れる事二、三時間ほど。胸にかかる重みに彼女はうめき声をあげた。 「にゃあ」 「……ああ、すみません、今起きますぅ」  のしかかる重みは愛猫によるものだ。腹を空かせ、痺れを切らしたお嬢様のために、彼女もまたベッドから起き、台所に向かう。  用意した朝食をガツガツと召し上がる愛猫にほっとした後、彼女はベッドへと戻った。サイドテーブルに置かれた人形用のベッドから、銀髪の少年のビスクドールを取り出す。 「おはようございます、お嫁様」  心の嫁――要するに架空のキャラクターに対し、そう言って、彼女の一日が始まった。
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