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少年は、小さな部屋の中にいた。
自分の住む町に、こんな場所があるなんて、知らなかった。
2畳半の、小さな部屋に、ちゃぶ台が一つ。窓が一つ。頑丈そうな、電子ロックの扉が一つ。
急須と湯呑み。固そうな枕が一つずつ。
彼は、これからどうなるのか。
万引き防止のポスターすら、ろくに見たことがなかった彼には、知ることができない。
完全な冤罪だ。
「クソッ………………」
思わず床を殴り付けるが、なにが変わるわけでも、なにがおこるわけでもない。
「……チクショウ………なんだって…なんだって言うんだよ!!」
流れ落ちる涙は、悔しさからか、別のものか。ただただ苦く、塩辛い。
そのとき、彼のポケットの中で、なにかが震えた。
「……?……テレビ…電話…?」
不審すぎる。
携帯端末が取り上げられていなかったこともそうだが、彼には、テレビ電話をかけてくるような知り合いが、一人もいない。
そもそも、友達と言えるような関係の人間がいない。
せいぜいで、バイト先の知り合いくらいしか番号登録をしていない。
と、いうか。
「なんだこれ…」
#42666なんていう番号に、心当たりがない。
だが、
『もしもし…えっと、今度こそ、聞こえますかー?』
幼い子供のような声。
通話ボタンなんか押してないのに、勝手に、全体的なシルエットが蟻っぽい少女のアバターが表示される。
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