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『だよね』
その言葉に。ふと少年は思い返す。
「あんたら、俺が犯人だとは思わないのか?」
『はて、なぜですか?』
純粋に、疑問が返ってくる。
「町じゃ、俺の似顔絵つきで、俺が犯人だってことに…」
『ああ、思うわけありませんよ。その似顔絵は、私が適当にパーツを切り貼りした結果、偶然できてしまったものですから』
さも当然だというように、声は言う。
申し訳なさ、罪悪感、自分のせいで人が無実の罪でとらえられている事への感情は、一切ない。
むしろ、どこか誇らしげに。
『おいハノン、それはちょっとまずかったんじゃ…』
『ほえ?いやだって、本当のことだよ?それに、言ったでしょう?私は情報管理プログラムだと。町の中のことなら、迷子の猫ちゃんの位置情報から、お祖母ちゃんのくしゃみの数まで完璧に把握してますって』
思わず怒鳴りかけた声が消える。
「くしゃみの数…って」
さすがにおおげさだろう、といいかけた。
が、
『ええ。約10㍉四方に一つずつ盗聴器を。約10㌢四方に監視カメラを埋め込んでいますから。町の全域に』
ゾクゥッと背筋に怖気がはしる。
思わずバッバッと辺りを見渡してしまうが、それで見つけられるようなら、もうとっくに知られているだろう。
『安心しとけ。その部屋にはねーよ。だからこそ、こんな面倒な方法でしかコンタクトをとれなかったんだ』
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